京成バス乗務員による乗客救命事例

2015年3月31日(火)に船橋市栄町内を運行していた京成バスの車内において、乗務員とバス会社スタッフの迅速・適切な救命処置により、乗客の尊い命が救われました。関係者の方々のコメントをもとに、その救命処置についてご紹介いたします。

京成バスシステムの取り組み

バス車内AED設置ボックス
バス車内AED設置ボックス

京成バスシステム株式会社では、お客様にとって安心・快適なバスを目指して、観光バスと企業送迎バス(一部)、路線バスにAEDの設置を進めています。現状ほぼすべての車両に設置済みとなっていますが、今後も全車両への設置を進めていく予定です。
また、同社では2013 年9月に貸切バス事業者安全性評価認定制度の認定も取得しています。

救命処置当日の状況

救護活動に使用されたものと同型のAED Plus
救護活動に使用されたものと同型のAED Plus

19時30分頃、40代女性Bさんがバス車内で、突然、心肺停止状態で倒れました。Bさんはバスに乗車するためバス停まで急いで移動していた様子で、倒れたのはバスに乗り込み、席に座った直後のことでした。様子を見ていた別の乗客が運転手である山田大智さんに連絡し、山田さんは至急安全な場所にバスを停車させました。
現場が京成バスシステム本社に近かったため、山田さんは無線で本社にAEDと119番通報を要請し、Bさんを床に寝かせ、救命処置を開始しました。気道を確保し、意識と脈の確認を行いましたが、意識も脈もない状態でした。その間に本社から連絡を受けた同社社員の竹内淳一さんがAEDを持って現場に到着しました。
竹内さんは即座にAEDを装着しましたが、初回の解析では電気ショックの必要はなしと判断され、山田さんはAEDの指示に従い胸骨圧迫と人工呼吸を開始しました。竹内さんがAEDの操作を続け、2回目の解析時に電気ショックが行われました。その後も山田さんは救急車が到着するまで胸骨圧迫と人工呼吸を続けました。
7、8分後に救急車が到着し、救命隊員が処置を引き継ぎ、Bさんの意識は回復しないままでしたが、搬送可能と判断され病院へ搬送されました。

Bさんは一命を取り留め、約1カ月の入院治療後無事に退院し、社会復帰されています。

救命活動を行った竹内淳一さん、山田大智さんコメント

竹内純一さん

竹内さん:まず、当日は皆が慌ててしまう状況でしたが、山田さんは非常に落ち着いて、冷静に対応をされていたことに感心しました。私はAEDを持参し、その後の操作を行いましたが、AEDがすべて指示をしてくれたので、操作に対する戸惑いはほとんどありませんでした。実際にAEDを使用してみて、救命の手順をAEDが指示してくれることにより、適切な処置が行えたと思うので、AEDの重要性を再認識しました。
Bさんとは退院後お会いすることができ、元気になられた様子を拝見し、本当に良かったと思いました。自分の行動により人命を救助できたことを、誇りに思っています。また、あの日以来、日々AEDの設置場所を確認するようになりましたが、まだまだ十分とは言えないと感じる場所もありましたので、そのような場所にも設置が進めばと思います。さらに、企業にはAEDや救命処置の重要性を啓発していく活動も行っていただきたいと思います。

山田大智さん

山田さん:当日は無我夢中の状況でしたが、講習で習った手順に沿って救命処置を進めました。ですが、やはり自分の判断には自信が持てず、AED装着後AEDの指示により胸骨圧迫を開始することができました。また、「もっと強く押してください」というアナウンスを聞き、力いっぱい押すことができました。それまでは、肋骨を折ってしまったらいけないという気持ちから力を加減していましたが、AEDが後押しをしてくれました。竹内さんの協力もあり、救命処置を続けていましたが、救急車が到着するまでの7~8分が非常に長く感じられました。Bさんとお会いした時には、後遺症もない様子で普通に会話もでき、感無量でした。あの日以降、AEDや救命救急に関する事項にも関心を持つようになりました。今後同じような状況に遭遇した場合は、もっとスムーズに処置を行うことができると思います。救命処置に関してアドバイスをするとしたら、一呼吸おいて冷静さを失わないようにすることと、AEDが必要なことをすべて指示してくれるので勇気をもって行動して欲しいということです。AEDの使用率はまだまだ低いようですが、AEDの使用によって一つでも多くの命が救われたらと思います。

京成バスシステム株式会社青木良憲 代表取締役社長コメント

社内の表彰の際にも、竹内さん、山田さんにはお話しましたが、"人の命は地球より重い"ので、二人の勇気ある行動によってその尊い命が救われたことは、本当に素晴らしいことですし、よくやってくれたと思っています。
また、今回のことから、改めてAEDの重要性を認識させられました。かねてからAEDの設置を進めており、ほぼ完了したと思っていましたが、今回患者さんが倒れられたバスにはAEDが設置されていなかったため、全車両の状況を確認し直しました。今後すべての車両にAEDを設置し、お客様がより安心して利用していただけるようにしていきたいと思っています。

救助されたBさんコメント

正直、記憶がないのでその時の状況などは全く覚えておりません。しかし、一番初めの処置がしっかりとされていた為、良い状態で病院に送って頂いたと聞いております。本当にありがたいです。

本文中の組織名、所属名、役職名などはすべて取材時のものです。