2023年2月28日
日本では、心臓突然死で命を失っている人がたくさんいることをご存知でしょうか?その数は年間約7.9万人にものぼります。一日に換算すると約200人、7分にひとりが心臓突然死で亡くなっています。交通事故による年間の死者数(24時間以内)が2,610人(令和4年)**であることと比較すると、心臓突然死が誰にでも起こり得る可能性があることがわかります。
ここでは、心臓突然死、その主な原因のひとつの不整脈である心室細動とその対策について解説します。
*参照:日本AED財団「心臓突然死の現状」
**参照:警察庁交通局交通企画課「令和4年中の交通事故死者数について」
心臓突然死とは?
心臓突然死とは、心室細動のような致死的心室性不整脈に突如襲われ、心臓の収縮運動に異常が生じ、脳を含む全身に血液が循環できず死に至ってしまう病気です。
日本では心臓突然死によって亡くなっている人は年間約7.9万人に上るといわれており、年齢や性別に関わらず誰にでも起こり得ます。
心臓突然死の主な原因
心臓突然死にはさまざまな原因があるとされており、心筋梗塞や心筋症などのほか、遺伝性の不整脈もそのひとつとして挙げられます。遺伝性の不整脈のなかでも広く知られているのが、先天性QT延長症候群とブルガダ症候群です。これら不整脈を遺伝として引き継いでいる人の場合、血縁者が心臓突然死しているケースがみられます。
遺伝性不整脈は心臓の筋肉や血管からは異常がわからないうえに、自覚症状もなく、心電図から発見するしかありません。そのため、遺伝性不整脈に気付かず、心室に不整脈が生じる心室細動に急に襲われて亡くなってしまう可能性があります。
心室細動とは?
心室細動は心停止の原因としてもっとも多いものであり、致死性不整脈とも呼ばれる命に関わる極めて重篤な不整脈です。心筋梗塞、心筋症、重度の心不全など、心臓の病気をもつ人が発症しやすい傾向にあり、不整脈のひとつである心室頻拍の人もリスクが高いため注意が必要です。
不整脈とは、心臓を動かす電気系統が何らかの理由で混乱することで、心拍のリズムが通常と異なり遅過ぎる、速過ぎる、不規則になり、リズミカルな収縮が行えなくなる状態を指します。
心臓は、血液を受け取る役目の右心房、左心房、血液を送り出す役目の右心室、左心室という4つの部屋から成り立っています。
不整脈の中でも、心臓の血液を全身に送り出す場所(心室)に異常が発生して心臓がけいれんし、不規則にブルブル震え(細動)、血液を脳や全身へ送り出せなくなる状態を心室細動とよびます。
参考:旭化成ゾールメディカル「心停止とは?AEDの使用が必要な症状について」
心室細動の症状
心室細動が起こると、全身の臓器への血液供給が突然止まり、脳への血液も遮断され、心停止状態になります。そのため、心室細動が発生してから数秒のうちに意識消失や呼吸停止という症状が起きます。
適切な救命処置が迅速に施されなければ、数分のうちに脳に機能障害が起こり、10分経過すると救命の可能性はほとんどなくなり死に至ります。救命できた場合でも、麻痺などの重篤な後遺症が残ることがあります。
参考:旭化成ゾールメディカル「AEDとは - 救命処置(胸骨圧迫・AED)と生存率」
心室細動から命を救うAEDの電気ショック
心室細動によって心停止してしまった場合、迅速な救命処置が必要です。心停止にする救命処置は1分1秒を争います。厚生労働省が公開している「救急蘇生法の指針2020(市民用)」においても、救急車の到着を待つ間に、その場に居合わせた人が心停止を起こした人に対して救命処置を行った場合、救命率が2倍以上に保たれることが言及されています。
参照:日本救急医療財団「救急蘇生法の指針2020(市民用)」
目の前で人が倒れ、意識やふだんどおりの呼吸がない場合や判断に迷う場合は、ただちに119 番通報をし、胸骨圧迫(心臓マッサージ)と人工呼吸(できる場合のみ)による心肺蘇生法の実施に加え、AED(自動体外式除細動器)を使用しましょう。心室細動は自然に回復することがほとんどなく、効果的な治療法はAEDで電気ショックを与え除細動を行い、心臓に正常なリズムを取り戻すことであると言われています。
AEDは、初めてでも使用できるよう音声やディスプレイ表示で救命処置の手順やAEDの操作方法を指示してくれます。
また、日頃から救命講習を受講する、動画で一次救命処置の手順を確認するなどしておくと、万が一の際に落ち着いて対応することができます。
旭化成ゾールメディカルのAEDサイトでは、「AEDの使い方と心肺蘇生の流れ」が学べるコンテンツを多数ご用意しています。一次救命処置やAEDについての疑問にお答えしている「よくあるご質問」や、救命講習について解説したAED コラム「AEDの講習会とは?一次救命を学ぶには?」もぜひご活用ください。