2023年9月6日
旭化成ゾールメディカル株式会社は、2021年に続き、医療従事者を除く一般市民約500人に対して「一次救命処置およびAED使用に関する意識調査」を実施しましたので、その結果をここに公開いたします。
対象者:20才以上の男女
有効サンプル数:494人
調査地域:全国
調査期間:2023年5月23 日~2023年5月31日
調査方法:インターネットリサーチ
一次救命処置およびAED使用に関する意識調査(全10問)
Q1: あなたは、人が目の前で突然倒れた場合、救命処置において胸骨圧迫(心臓マッサージ)とAEDが必要不可欠なことを知っていますか?
目の前で突然人が倒れたときの救命処置について、胸骨圧迫とAEDが必要不可欠なことを知っているかどうかを聞く質問に対して、63.8%の人が「知っている」と回答しました。
「胸骨圧迫は知っていたが、AEDが必要不可欠なことは知らなかった」と回答した人は9.7%、反対に「AEDは知っていたが、胸骨圧迫が必要なことは知らなかった」と回答した人は14.7%という結果から、8割以上の人は救命処置にはAEDが必要なことを知っているということがわかりました。
AEDが必要なことを知っていた人は78.5%、胸骨圧迫が必要なことを知っていた人は73.5%と、AEDと比較して、胸骨圧迫の必要性の認知度が約5ポイント低い結果となりました。
また、「いずれも知らなかった」と回答した人は11.9%でした。
前回の調査結果では「知っている」と回答した人が68.6%、「AEDは知っていたが、胸骨圧迫が必要なことは知らなかった」と回答した人が12.6%、「胸骨圧迫は知っていたが、AEDが必要不可欠なことは知らなかった」と回答した人が7.5%、「いずれも知らなかった」が11.3%だったことと比較すると、全体的に若干ではありますが、一次救命処置における胸骨圧迫(心臓マッサージ)とAEDの必要性に関する認知度に低下が見られました。
Q2:あなたはAEDを使用した救命講習を受講したことがありますか?
AEDを使用した救命講習の受講経験を聞く質問では、58.0%の方が講習を受けたことがあると回答しました。受講した場所(複数回答可)として最も多かった回答は、「学校や職場で講習を受けたことがある」で25.9%、次いで「運転免許取得時に講習を受けたことがある」が23.9%、「消防署や自治体の講習を受けたことがある」と回答した人が22.0%でした。また、その他の回答として「オリンピックのボランティア登録で講習を受けた」「町内会・自治会」といった回答も挙がりました。
一方で、「救命講習を受けたことがない」と回答した人は42.0%という結果でした。
前回の調査結果との比較において、受講経験の有無についてはほぼ同水準であることがわかりました。受講場所については、「学校や職場」「運転免許証取得時」は増加している一方で、「消防署や自治体」と回答した人の割合が減少していました。
Q3:もし、目の前で突然人が倒れた場合、あなたはその人に対し、胸骨圧迫(心臓マッサージ)やAEDの使用などの救命処置ができると思いますか?
Q4:救命処置ができない、できるかわからないと回答した理由をお答えください。
目の前で突然人が倒れた場合の救命処置ができるかどうかの質問に対して、「できる」と回答した人は21.1%、「できない」と回答した人が46.1%、「わからない」と回答した人は32.8%という結果でした。
救命処置が「できない」または「できるかわからない」と回答した人の理由(複数回答可)として、42.9%が「救命処置の内容や方法を知らないから」を挙げています。また、33.9%の人が「救命処置の内容や方法は知っているが、実際に人に処置を行うのは抵抗があるから」と回答していることから、救命講習の受講経験があっても、突然の出来事に対していざ実践するとなると、少なからず不安や抵抗を感じる人が少なくないことがうかがえます。
次いで「電気ショックをすることに不安があるから」が22.1%、「救命処置をした結果に対し、責任を問われたくないから」が20.5%、「救急隊を待った方が確実だと思うから」が17.2%、「衣服を脱がしたり、肌に触れることに抵抗があるから」が15.0%という結果でした。
その他、自由回答として「AEDがどこにあるかわからない」「パニックに陥る可能性がある」という回答も複数あり、不慣れな状況で実際に救命処置ができるのか懸念を持つ人が少なくないことがわかりました。
前回調査の結果では、「できる」が19.7%であったため、今回の結果では21.1%とわずかではありますが、「できる」と回答した人の割合が増えています。また、「できない」または「できるかわからない」と回答した人の理由については、「救命処置の内容や方法を知らないから」が41.8%から42.9%に微増している一方で、その他の選択肢を理由として挙げている人の割合はいずれも減少していました。
また、「できない」または「できるかわからない」理由として、今回調査で新たに追加した「電気ショックをすることに不安があるから」と回答した人が22.1%だったことから、電気ショックを行うことへの不安を持っている人が一定数いることが確認されました。
Q5:あなたが救命に関する知識を十分に持っていると仮定します。目の前で倒れている人が女性だった場合、胸骨圧迫(心臓マッサージ)やAEDの使用などの救命処置ができると思いますか?
Q6:女性に対する救命処置ができない、できるかわからないと思う理由は何ですか?
救命に関する知識を十分に持っているという仮定のもとで、目の前で倒れている人が女性だった場合、胸骨圧迫やAEDの使用などの救命処置ができるかどうかを問う質問では、32.8%の人が「できる」と回答しました。「救命処置をしたいが抵抗がある」と回答した人は38.1%、「できない、したくない」は15.9%、「わからない」は13.1%でした。
「抵抗がある」「できない、したくない」「わからない」と回答した人のうち、その理由(複数回答可)として53.8%は「衣服を脱がせたり、肌に触れることに抵抗があるため」、34.0%は「セクシャルハラスメントで訴えられないか心配なため」と回答しています。一刻を争う救命処置の場面であっても「服を脱がす」「肌に触れる」という行為に少なからず抵抗感がある人の割合が高いことがわかります。また、31.4%の人は「女性に対する救命処置の方法を知らないため」と回答しています。救命処置を行う際に下着を脱がせたほうがよいかどうかの判断や、女性に対するAEDのパッドの貼り方などへの不安が推察されます。
前回調査の結果では、「できる」と回答した人が34.8%で、今回は2ポイント減少しました。「救命処置をしたいが抵抗がある」は前回より0.2ポイント、「できない、したくない」は15.9%で1.9ポイントそれぞれ上昇しましたが、どの回答率も前回から大きな変動はみられませんでした。
また、「抵抗がある」「できない、したくない」と回答した人の理由については、「女性に対する救命処置の方法を知らないため」「セクシャルハラスメントで訴えられないか心配なため」と回答した人の割合には大きな変化がない一方で、「衣服を脱がせたり、肌に触れることに抵抗があるため」は、60.1%から53.8%に減少しました。
Q7:あなたが救命に関する知識を十分に持っていると仮定します。目の前で倒れている人が子ども(小学生未満の未就学児)だった場合、胸骨圧迫(心臓マッサージ)やAEDの使用などの救命処置ができると思いますか?
Q8:子ども(小学生未満の未就学児)に対する救命処置ができない、できるかわからないと思う理由は何ですか?
救命に関する知識を十分に持っているという仮定のもとで、目の前で倒れている人が子ども(小学生未満の未就学児)だった場合、胸骨圧迫やAEDの使用などの救命処置ができるかどうかを問う質問では、38.6%の人が「できる」と回答しました。「救命処置をしたいが抵抗がある」と回答した人は35.1%、「できない、したくない」と回答した人は13.6%、「わからない」は12.7%でした。
「抵抗がある」「できない、したくない」「わからない」と回答した人のうち、その理由(複数回答可)とし
て、55.1%が「子どもに対して大人と同じように胸骨圧迫(心臓マッサージ)を行ってよいか分からない、抵抗があるため」を挙げました。「子どもに対して大人と同じようにAEDを使用してよいかわからない、抵抗があるため」と回答した人が40.7%、「子どもに対する救命処置の方法を知らないため」は33.3%でした。いずれも回答率が高いことから、子ども(未就学児)に対する救命処置法を知らない人が多いことがうかがえます。
また、他の自由回答として「事後の責任を押し付けられる可能性があるため」「親に訴えられる可能性がある」などのコメントもありました。自分が救命処置をして子どもの容態が回復しなかった場合に、自分に向けた訴訟の可能性を懸念して、子どもの救命処置に抵抗を感じる、子どもの救命処置をしたくないと考える人もいることがわかりました。
Q9:胸骨圧迫(心臓マッサージ)に関する以下の知識について、知っているものをすべて選択してください。
胸骨圧迫(心臓マッサージ)に関する知識を問う質問に対しては、「知っているものはない」と回答した23.9%を除いた76.1%の人が、何らかの知識を持っていることがわかりました(複数回答可)。「救命には胸骨圧迫(心臓マッサージ)が必要不可欠なこと」を知っている人は57.1%、「胸骨圧迫とAEDに使用により、生存率が2~3倍上がる可能性があること」を知っている人は43.1%、「質の高い胸骨圧迫を行うには、圧迫時の深さとテンポが必要なこと」を知っている人は39.9%でした。
Q10:質の高い胸骨圧迫とは、5〜6㎝の深さで1分間に100〜120回のテンポで絶え間なく行うことを指します。もし、目の前で突然人が倒れた場合、あなたはその人に対し質の高い胸骨圧迫を行うことができると思いますか?
質の高い胸骨圧迫に関する知識があるかを聞く質問には、「できると思う」と回答した方は28.7%、「できないと思う」と回答した方が68.3%でした。
自由回答では「出来ると思うが、体力に自信がない為持続して出来るか心配である」「体力的に続けられるかわからない」という、胸骨圧迫を継続する体力的負担や不安を挙げるコメントが見受けられました。
調査結果を踏まえて
前回調査と今回調査の結果の比較では全体的に大きな変化はなく、一次救命処置に対する知識不足や心理的な不安・抵抗感を持っている人が多いことがわかりました。
約4割の人が、AEDを使用した救命講習を受けたことがないと回答しましたが、受講経験者であっても目の前で倒れた人に対して胸骨圧迫(心臓マッサージ)やAEDを使用した救命処置を「できると思わない」「わからない」人も少なくありません。
● 電気ショック実施への不安
今回の調査では、救命処置が「できない」「できるかわからない」理由の選択肢として、「電気ショックをすることに不安があるから」を追加したところ、22.1%の人が選択する結果になりました。
電気ショックを自分が行うことや、間違えてショックボタンを押してしまったら、と不安を覚える人も多いかもしれません。しかし、AEDは必ず電気ショックを行うとは限りません。AEDは傷病者の心電図を解析し、電気ショックが必要な場合にのみ電気を流す仕組みです。電気ショックが不要な場合にショックボタンを押しても電気は流れません。AEDが電気ショックの要否と取るべき手順をすべて指示してくれますので自分で判断する必要はありません。救命処置が必要な際は、ためらわず速やかにAEDを使用しましょう。
参考:旭化成ゾールメディカル「AEDは必ず電気ショックをする?AEDの正しい知識を身につけよう」
● 女性・子どもに対する救命処置に対する誤解や抵抗感
傷病者が女性や子どもの場合の救命処置に対して、抵抗や不安を抱える人が多いことが改めて確認されました。
たびたびSNS上などでデマが拡散され話題になりますが、救命処置のために男性が女性の衣服を脱がせてAEDを使用したとしても、セクハラとなることはありません。躊躇せず胸骨圧迫とAEDを使用してください。また、周囲の人に協力を求め人垣を作って通行人などの視線を遮る、救命テントがある場合は使用するなどの配慮は、心理的な抵抗感の払しょくに役立ちます。
未就学児への胸骨圧迫は、小学生~大人と異なり「胸の厚さの約1/3の深さ」という指標があります。万が一のときのために、ぜひ覚えておきましょう。AEDは傷病者の年齢に関わらず使用できます。AEDの音声ガイダンスやパッドなどに記載されている未就学児に関する説明に従えば心配ありません。小学生~大人/未就学児共通パッドが標準装備されている、未就学児用モードを搭載しているAEDもあるため、身近に設置されているAEDの種類をあらかじめ確認しておくことをおすすめします。
倒れた人の性別や年齢によって、救命処置が行われないということがあってはなりません。善意の救命処置が法的責任を問われることはありませんので、女性や未就学児に対しても迷わずAEDを使って救命処置をしてください。
参考:旭化成ゾールメディカル「女性に対するAEDの使用について知っておきたいこと」
● 心停止から大切な命を救うために、一次救命処置法を学びましょう
突然の心停止から大切な命を救うには、迅速な一次救命処置が不可欠です。何もせずに救急車の到着を待っているだけでは、助かる命も救うことができなくなるかもしれません。昨今は、感染症の流行、異常気象や自然災害などによる救急医療の逼迫も課題となっています。最新のデータによると119番通報から救急隊の到着まで全国平均9.4分*と所要時間が毎年延びているため、その場に居合わせた人による一次救命の重要性がより一層高まっています。
*参照:総務省消防庁「令和4年版 救急救助の現況」
AEDの普及は進んできていますが、一般市民が救命処置を行った場合のAEDの除細動実施率は高くないのが現状です。AEDは誰でも迷わず使えるよう、音声ガイダンスやテキストメッセージなどでAEDの操作方法や一次救命の手順を指示してくれますので、必要な場面に遭遇したら迷わず電源を入れてください。
AEDの使用経験がない人がほとんどであることを踏まえれば、その使用に不安を抱くのは当然です。こうした不安や抵抗感を低減するには、積極的な救命講習の受講やインターネットなどを利用した救命処置の手順の確認など、日頃の学習や訓練が有効です。
コロナ禍の影響で、消防や職場・学校などでの救命講習の開催を見合わすなど、救命に関する知識や実践的な技術を対面で習得する機会が減少しましたが、今年に入り再開しているところが多く見受けられますので、救命講習を受講したことがない人や受講してから時間が経っている人は受講をおすすめします。
救命講習を受けに行く時間がない人には、オンラインでの座学や動画視聴による学習が便利です。
旭化成ゾールメディカルのAEDサイトでは、「AEDの使い方と心肺蘇生の流れ」が学べるコンテンツを多数ご用意しています。一次救命処置やAEDについての疑問にお答えしている「よくあるご質問」もぜひご活用ください。 旭化成ゾールメディカルは、「ひとりでも多くの目の前の命を救う」ことをミッションとし、AEDをはじめとする製品群と胸骨圧迫の技術の普及を通じて、誰もが一次救命処置ができる社会を目指しています。