2024年8月28日公開

地震や台風、水害など、さまざまな自然災害に見舞われやすい日本。毎年9月1日は「防災の日」、8月末から9月初めにかけては「防災週間」と定められているのをご存じでしょうか?この時期は、家庭で行える防災対策や用品・備蓄などについて、メディアを通じた呼びかけが盛んに行われます。

「防災週間」「防災の日」をきっかけに、家庭のみならず職場や学校、地域コミュニティなどでの防災・減災に対する備えを確認し意識を高めるとともに、万が一の際に大切な命を守るため、AEDの設置はもちろん、救命講習を受講したり、AEDを使った心肺蘇生法を学んだりすることも大切です。

ここでは、「防災の日」「防災週間」が創設された経緯・目的や企業や地域で取り組むべき防災対策、AEDの設置と救命講習の重要性などについて紹介します。

「防災の日」と「防災週間」とは

「防災の日」と「防災週間」とは

2024年8月現在、日本では毎年9月1日を「防災の日」と、8月30日から9月5日までの期間を「防災週間」と定めています。

9月1日は1923年(大正12年)に関東大震災が発生した日であるとともに、暦では二百十日にあたり、台風シーズンを迎える時期です。過去に大きな災害が起きた時期に、地震や風水害に対する心構えを醸成するため、1960年(昭和35年)に「防災の日」が創設されました。また昭和57年(1982年)からは、9月1日を含んだ一週間が「防災週間」になりました。

「防災の日」「防災週間」には、防災への意識を高めるため、全国で避難訓練やシェイクアウト訓練、救命講習などさまざまな防災・減災を目的とした訓練が実施されます。救命講習の中でAEDの使い方や心肺蘇生法なども学べるので、非常時に備えた一次救命処置の仕方を身に付ける大切な機会といえるでしょう。



防災の日・防災週間が創設された目的

防災の日と防災週間は、災害の未然防止と被害の軽減を目的に創設されました。日本の国土は地理や気象などの条件から台風や地震、豪雨などの災害が起こりやすく、災害に対する関心や理解を深め備えることが重要です。防災の日と防災週間を通じて、国民の防災への意識を高めるとともに、以下のような災害に強い社会づくりが目標とされています。

  • 大規模自然災害から得られた教訓を活かす
  • 普段から災害時における被害軽減につながる備えを行う
  • 災害時に迅速・適切な防災活動を実施し、被災後の円滑な復旧・復興を目指す
災害に強い社会を実現するためには、個人の努力だけでも、国の制度作りだけでも不十分であり、自助・共助・公助の組み合わせが大切です。

参考:内閣府「令和6年度「防災週間」、「津波防災の日」及び「火山防災の日」について」



防災・減災におけるAED設置と救命講習の役割・重要性

自宅にAEDを設置する利点

大規模な自然災害が起きた場合に、人命を守り、防災・減災に貢献するため大切な役割を果たすのが、AEDの設置と救命講習です。

突然の心停止には、迅速な救命処置が不可欠です。心停止から5分以内の除細動(AEDによる電気ショック)が推奨されています。8分以上経過すると救命率は25%まで低下し、10分経過すると救命の可能性は極めて低くなります。また、血流が絶たれて3分を経過すると脳機能に障害が発生するため、心停止時には3分以内に救命処置を開始することが重要です。災害時は救急車・救急隊が平常時のように到着しない可能性もあるため、公共施設、商業施設、職場などの身近な場所へのAED設置の設置や現場での救命処置が必要です。

「AED の適正配置に関するガイドライン」では、「施設内での AED の配置に当たって考慮すべきこと」として、以下が示されています。

  1.  心停止から5分以内に電気ショックが可能な配置
    • 現場から片道1分以内の密度で配置
    • 高層ビルなどではエレベーターや階段等の近くへの配置
    • 広い工場などでは、AED 配置場所への通報によって、AED 管理者が現場に直行する体制、自転車やバイク等の移動手段を活用した時間短縮を考慮
  2.  分かりやすい場所(入口付近、普段から目に入る場所、多くの人が通る場所、目立つ看板)
  3.  誰もがアクセスできる(カギをかけない、あるいはガードマン等使用できる人が常にいる)
  4.  心停止のリスクがある場所(運動場や体育館等)の近くへの配置
  5.  AED 配置場所の周知(施設案内図へのAED配置図の表示、エレベーター内パネルにAED配置フロアの明示等)
  6.  壊れにくく管理しやすい環境への配置
住宅地域では、集合住宅・町内会・自治会など地域の人が集まる場所への設置がおすすめです。住宅地域では 100m 間隔で AED を設置することが推奨されるべきという海外の調査もあります。上記を参考にAED設置を進めるとともに、AED設置場所の掲示や救命講習を開催し、緊急時に適切な救命処置が行えるようにしましょう。

一次救命処置には、胸骨圧迫と人工呼吸、AEDの使用が含まれます。万が一の際に、迅速に適切に行えるようふだんから救命講習の受講や手順の確認など備えをしておくことが大切です。

AED講習を実施するとともに、従業員や地域住民に対しては積極的な講習会への参加を促しましょう。講習会が身近なところで開催されていない、都合がつかないなどの理由で現地での参加が難しい方の場合、オンライン講習やインターネット上の動画などの視聴を促すのがおすすめです。

参照:一般財団法人日本救急医療財団「AED の適正配置に関するガイドライン」
参考:旭化成ゾールメディカル「AED講習はどこで受けられる?一次救命処置を学ぶ重要性と講習の内容・受講方法とは」



企業の災害対策とAED

企業の災害対策とAED

万が一災害が起こった場合に、企業が従業員の安全を守るためには日頃の防災対策が欠かせません。ここでは、企業が実施すべき災害対策の例を解説します。



災害図上訓練の実施

災害図上訓練は、地図上に予測できる危険なポイントを記入していくシミュレーション型の防災訓練です。机上で行う防災訓練として、近年注目が集まっています。

地図上だけのシミュレーションでは訓練として本当に役立つのか疑問を持つかもしれませんが、従来の防災訓練は災害発生から避難までがパターン化されており、受動的・形式的になりやすく、緊張感の低下が指摘されていました。災害図上訓練では、8〜12人程度と比較的少人数のグループで意見を出し合いながら進めます。新しいアイデアや危険予測が生まれやすく、実践的な防災訓練として有効とされています。

災害図上訓練のひとつであるDIG (Disaster=災害、Imagination=想像力、Game=ゲーム)と呼ばれるワークショップは、企業・自治体・学校なでさまざまな組織において活用されており、防災力の向上に向けた自助公助共助の確立への取り組みとして広がりを見せています。

参照:内閣府防災情報「平成20年度 広報誌「ぼうさい」特集 想像力を高めて「もしも」に備える!災害をイメージし、防災につながる行動へ【コンテンツ編】」





消防法の改正内容の確認

災害対策においては、消防法の内容を理解し対応しておくことが大切です。消防法とは、日本における火災の予防やケガ人の適切な搬送を目的として、防火・消防上必要な規制を定めた法律です。消防法はすべての建築物が適用対象となります。

企業が災害対策を実施する上では、防火管理者の設置や危険物の貯蔵・取り扱い、消防設備の整備・定期点検など、消防法の規定・義務の確認が重要です。消防法は改正されることもあるため、防災対策を実施する際は、法律が改正されていないかを確認し、法律を常に遵守できるようにしましょう。



安否確認システムの導入

安否確認システムとは、災害時に従業員の安否をスムーズに確認できるシステムです。安全確認システムを活用すれば、災害時に従業員へのメール・メッセージを自動配信できるため、担当者がマニュアルで連絡したり、管理したりする必要がありません。安否確認が効率化されるだけでなく、緊急時において特に重要な初動の遅れを防止し確実な対応が可能です。

サービスによっては、情報交換用の掲示板や被害状況の集計、社員家族の安否確認などさまざまな機能が搭載されています。近年では、地震に限らず台風や豪雨、大雪の際などにも利用されており、導入する企業が増えています。



BCP(事業継続計画)の策定

BCP(事業継続計画)は、企業が大規模な自然災害などの緊急事態に遭遇した際、事業の継続や早期復旧を目指すため、あらかじめ策定しておく計画です。災害時に会社への損害を最小限に抑えられれば、従業員の安全を守るとともに雇用を確保、事業資産も保護することで企業価値の維持・向上へとつなげられます。

BCP策定に当たっては、優先して継続すべき中核事業や復旧までの目標期間を決め、平常時から災害が起きた場合の代替拠点・設備などを整備しておきましょう。

なお、AEDの設置は義務化されていないものの、従業員の安全を確保するため、適正配置のガイドラインで設置が推奨されている施設・地域や、安全配慮義務の観点から設置が望ましいといえます。BCP策定の際には、AED設置や救命講習の実施も併せて検討しましょう。

参照:内閣府防災情報「企業防災のページ(内閣府防災担当)」



地域社会の災害対策とAED

地域社会の災害対策とAED

自宅で被災した場合、避難はもちろん避難後の生活も地域単位で行われるため、近隣の人々とお互いに助け合う共助が重要です。ここでは、地域社会の災害対策とAED設置の重要性について解説します。



防災訓練・防災イベントの開催

地域における防災訓練や防災イベントは、住民の防災意識を高め、災害時に人々の安全を守るため重要な役割を果たします。イベントを開催する際は、できるだけ多くの人が参加でき、なおかつ体験を通じて防災に役立てられるコンテンツを企画することが大切です。

親子で参加できる防災ワークショップや消火活動体験、避難訓練、給食・給水訓練、救出・救助訓練など、実践的な知識や体験を得られる取り組みを計画しましょう。また人命救助に関しても体験を通して学べる機会です。AEDの設置場所の周知、AEDの基礎知識や操作方法の習得、実際の救命活動をシミュレーションしたトレーニングなどを実施すると良いでしょう。

参考:旭化成ゾールメディカル「AEDの使い方と心肺蘇生の流れ」





地域コミュニティのネットワークづくり

地域における防災対策では、地域ごとのコミュニティやネットワークづくりが重要になります。1995年に発生した阪神・淡路大震災では、被災後瓦礫の下から市民によって救助された人の数は約27,000人。警察・消防・自衛隊によって救助された人数である約8,000人の3倍以上となっており、地域コミュニティは災害時に大きな役割を果たす防災の要といえます。

日頃から地域に住む人々が防災関係の情報を簡単に確認できるよう、広報紙や役所の掲示板・ホームページ・SNSなどを活用し、災害に対する地域コミュニティの意識を高めていきましょう。

参照:消防庁国民保護・防災部 防災課「災害対応能力の維持向上のための地域コミュニティのあり方に関する検討会 報告書」





避難所運営のシミュレーション

地域の防災を考える上で、災害が起きた場合に避難所・仮設住宅などをどのように運営するかの計画も大切です。2024年1月に発生した能登半島の震災でも課題として浮かび上がったように、震災後の避難生活の長期化は地域防災の大きな課題となっています。平常時から、避難施設での生活に必要な機能の設置や、特殊な事情がある人への配慮をシミュレーションした計画が必要です。

特に高齢者や障害がある人、子どもとその家族、女性、外国人など、特有のニーズを周囲に伝えられず、取り残されがちな人々に対する配慮は欠かせません。また自宅から指定の避難所が遠い、地域の人々と離れたくない、ペットがいるなどの事情から自主避難を続ける人も少なくない点も想定しておく必要があるでしょう。

避難時には不自由な生活によるストレスや健康状態の悪化から災害関連死のリスクが高まるため、突然の心停止への対策が必要です。特に救急へのアクセスが良くない環境においては、命を救うためのAED設置や救命処置技能の習得・実施が求められます。

まとめ

毎年「防災の日」や「防災週間」には、全国で避難訓練や救命講習などの訓練が実施され、地震や台風、豪雨などの災害に対する意識を高め、防災・減災への備えを見直す大切な機会となっています。

災害対策と防災意識向上には、企業と地域社会双方の協力が欠かせません。そしてそれらを構成する一人ひとりが、意識を向上させるとともに、防災訓練・AEDを使った救命講習などへ積極的に参加し、日頃から災害に備えていきましょう。

旭化成ゾールメディカルのAEDサイトでは、「AEDについての基礎知識」や「AEDの使い方と心肺蘇生の流れ」が学べるコンテンツを多数ご用意しています。一次救命処置やAEDについての知識が得られる「AEDコラム」や、よくある疑問にお答えしている「よくあるご質問」もぜひご活用ください。
AEDの導入・設置に関するご相談は、お問い合わせフォーム、またはAEDコールセンターへお気軽にお問い合わせください。