2025年2月26日公開

AEDを設置する際、費用を抑えるために中古AEDの購入を検討するケースがあるかもしれません。しかし、中古AEDには多くのリスクが存在し、購入・設置にあたっては十分な注意が必要ため、原則的に新品を導入するのが安心・安全です。では、中古AEDには、どのような問題点があるのでしょうか。

ここでは、中古AEDの注意点や購入・設置をする際の留意点を解説します。AEDの導入・設置にあたって、中古AEDの購入を検討している方は、ぜひ参考にしてください。

中古AEDには要注意!

札幌市保健所外観

中古AEDは購入費用を抑えられる利点もありますが、多くのリスクがあるため、それらをあらかじめ理解しておきましょう。知らずに購入・設置した場合に問題が起きる恐れがあるため、細心の注意と確認が必要です。
まずは、購入時の注意点を解説します。

AEDを販売するには資格が必要

AEDを含む「高度管理医療機器」は「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(医薬品医療機器等法)」第39条の規定により、販売・貸与業務を営む際には、あらかじめ保健所からの許可が必要です。高度管理医療機器には、AEDの他、心臓ペースメーカーやコンタクトレンズ・血糖測定機なども含まれます。

よって、AEDを販売・貸与をするためには高度管理医療機器等販売業の許可が必要です。また貸与する場合にも、高度管理医療機器等貸与業の許可がなければなりません。
さらに、複数の営業所がある場合は、営業所ごとに所在地の保健所から許可を得る必要があります。本社だけが申請するのでは不十分です。

中古のAEDの販売やレンタル・リースを行う際も、同様に許可が必要です。AEDは誰でも販売できる製品ではないため、購入時には必要な許可を受けている販売業者かを確認しなければなりません。許可を得ている販売業者の多くは自社サイトに許可番号や許可証の情報を掲載しており、掲載がない場合は無許可の可能性も考えられます。

販売業者のサイトで確認ができない場合は、自治体のWebサイトなどで許可番号と販売業者名の一覧が公開されているため調べてみるとよいでしょう。

参照:e-gov 法令検索「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」
   京都市「医薬品医療機器等法に基づく許可施設の一覧について」

大手オークションサイト・フリマサイトでは出品禁止

used goodsイラスト

中古品を手軽に入手する方法として広く利用されているオークションサイトやフリマサイトですが、インターネットの大手オークションサイトやフリマサイトでは、AEDは出品禁止とされています。
例えば、メルカリでは「販売に法律上の許可または届出を要する医療機器」は販売禁止です。同様に、Yahoo!オークションでも「高度管理医療機器は販売禁止」とされています。

どちらのサイトでも、医薬品・医療機器は基本的に販売禁止とされています。注意すべきは、規約に定められている医薬品・医療機器の出品自体が禁止されている点です。たとえ保健所から許可を得ていても、上記のサイトで出品・購入するのは規約違反になります。オークションサイトやフリマサイトでは中古AEDの購入はできないと考えましょう。

なお、救急絆創膏・医療脱脂綿・手術用不織布などの一般医療機器に関しては、使用時の安全上・リスクが極めて低いため、上記サイトでも出品が許可されています。

参照:メルカリ ヘルプセンター「医薬品、医療機器(禁止されている出品物)」
   Yahoo!オークション「第1編 Yahoo!オークションガイドライン細則」

AED訓練機(トレーナー)では電気ショックはできない

オークションサイトやフリマサイトでは、AEDの訓練機(トレーナー)が販売されている場合があります。訓練機は医療機器ではないため、販売しても法律上の問題はなく、サイトの禁止行為にも該当しません。

訓練機はあくまで練習用のため、音声ガイダンスは流れるものの電気ショックは行えず、救命処置ができません。訓練機は見た目が実機(電気ショックができる本物のAED)とよく似ており、製品名にもAEDという言葉が含まれているため、実機と間違えて訓練機を購入しないよう注意してください。

中古AEDを導入する際に考えられる問題点

AEDを利用している人々と電話をしている人

AEDを購入する際は、中古の選択肢も存在するものの、万一のリスクを考慮すると、人命救助に使用する医療機器は、正規ルートでの新規導入が望ましいといえます。ここからは、中古AEDを導入・設置した場合に考えられる安全や安心に関わる問題点を解説します。

安全に使用できる保証がない場合も

中古製品を正規ルートで購入しなかった場合、AEDの性能や動作が正常なのかの保証がない場合があります。そもそもAEDは定期点検が必要ですが、中古AEDではそれまで日常的な点検が行われているかも不明なケースが想定されます。

医療機器のトレーサビリティの観点から、AEDの設置管理者はメーカーや販売代理店への製品・ユーザー登録が必要です。メーカーへの登録がなかったり、前所有者の情報が更新されないままだったりすると、保証が受けられなかったり、電極パッドやバッテリーなどの消耗品の交換期限やAED本体の保証期間・耐用期間の期限、さらにはリコールなど製品に関する重要な情報が届きません。こうした製品に関する通知が届かないと、安全管理上の問題につながりかねません。

中古AEDでは、販売者から購入者へ登録の案内がない場合、購入者が登録の必要性を認識していなければ、登録自体が行われない可能性が高くなります。

中古品の場合でも、申請すれば登録自体は可能です。もしAEDを中古で購入した場合には、安全に使用するため必ず登録をしてください。メーカーや販売代理店に対して旧所有者から登録の移転などの連絡がない場合は、以前の登録が残ったままになっているため、登録依頼の際には中古で購入した旨の説明が必要になります。

AEDの保証期間・耐用期間が短い

中古AEDは新品より保証期間と耐用期間が短くなっているため、購入する場合はそれぞれの残存期間の確認が必要です。

保証期間は、取扱説明書などに記載されている動作保証条件でAEDに不具合が発生した際に、購入者(設置管理者)が通常追加費用なしで修理・交換サービスを受けられる期間を指します。ただし、例外事項もあるため、保証事項や保証規定を確認しておきましょう。

耐用期間は、6〜8年が一般的です。使用環境、単位時間内の稼働時間や使用回数などを考慮し、耐久性に係るデータから製造販売業者が設定した、仕様通りの機能・性能を維持したままAEDが使える期間です。耐用期間はAEDの添付文書や取扱説明書に記載されています。耐用期間を過ぎてしまったAEDは、正常に作動しない可能性があるため、万が一の際に命を救えないリスクが生じます。

またAED本体の耐用期間とは別に、電極パッドやバッテリーなどの消耗品は定期交換が必要なケースが一般的です。電極パッドは再使用禁止のため、使用したりパッケージを開封したりした場合に交換しなくてはなりません。パッドとバッテリーの有効期限はメーカーや機種によって異なるため、交換の要否や交換時期を調べる場合は、使用している機種の添付文書や説明書、最初の設置日、過去の交換履歴を確認してください。

中古の場合、AEDの保証期間や耐用期間の残存期間が短く、すぐに買い替えが必要になれば安く中古を購入したメリットが薄れてしまいます。また、残存期間や消耗品の交換履歴がわからない場合、適切に管理できず安全な使用が担保できない可能性もあるため注意が必要です。

参照:厚生労働省「AEDを点検しましょう!」
参考:旭化成ゾールメディカル「AED更新の必要性 - 保証期間と耐用年数の違いや、日常点検と消耗品の管理を理解しよう

まとめ

AEDを中古で購入すると費用を抑えられるものの、さまざまなリスクも存在するため注意が必要です。中古AEDは過去の日常点検や安全管理の履歴が追えない可能性や、保証期間・耐用期間の残存年数などにデメリットがあります。

万一の際命を守るためにも、AEDは中古ではなくなるべく新品を導入するのが望ましいでしょう。また新品のAEDでも、安全に使用するため日常点検や必要に応じた消耗品の交換が必要です。設置後も点検を欠かさず、いざという時、きちんと使えるよう適切に管理しましょう。

AEDの導入・設置に関するご相談は、お問い合わせフォーム、またはAEDコールセンター(0800-222-0889)へお気軽にお問い合わせください。
旭化成ゾールメディカルのAEDサイトでは、「AEDについての基礎知識」や「AEDの使い方と心肺蘇生の流れ」が学べるコンテンツを多数ご用意しています。一次救命処置やAEDについての知識が得られる「AEDコラム」や、よくある疑問にお答えしている「よくあるご質問」もぜひご活用ください。